メキシコのオーパーツ「アカンバロ恐竜土偶」は本物なのか偽物なのか?

恐竜土偶

恐竜土偶は、中米メキシコの首都メキシコシティーから西北に180キロほど離れた美しい田舎町のアカンバロ郊外で、考古学マニアのドイツ人の実業家ヴァルデマール・ユルスルートにより発見された土偶である。

スポンサード リンク

アカンバロ恐竜土偶の概要

実業家ヴァルデマール・ユルスルートは牡牛山の麓で多数の土偶を発見した。周辺を捜索した結果、3万点超という数の恐竜土偶が集まった。細部にいたるまで、実在の恐竜を彷彿とさせるスタイルであり、バリエーションも豊かである。

大きさは5センチから1メートルを超えるものまであり、素材は粘土が多く、中には花崗岩やヒスイを削ったものもあるという。

種類は、ティラノサウルス・プレシオサウルス・ステゴサウルス・プテラノドンなどの恐竜の他、猿・鳥・アルマジロなどの古代種、猿人・像・馬などの土製品が多い。

ユルスルートは「中南米の古代諸文明は、太古のアトランティス文明の遺産を引き継いで成立したものだ。これらの土偶もその産物である。テノチティトランの博物館に長年保存されていたが、スペイン人の侵略の際、まるごとアカンバロまで運ばれて隠蔽されたのだ」と主張した。

恐竜土偶は、スペイン人入植者による略奪を避けるために急いで埋められたのである。

南山宏氏の著書「オーパーツの謎」によると、土偶の数量と技術的多様性からみて、農夫一家ぐるみでもイカサマは不可能、製作に必要なカマドも燃料も存在しなかったとのことである。

放射性炭素C14による年代測定法

南山宏氏の著書によると、1968年に歴史学者の故チャールズ・H・ハプグッド教授は放射性炭素C14による年代測定法を採用し、3種の土偶破片のサンプルを、年代測定専門会社アイソトープ社の研究所に送り調査依頼をしたところ、それぞれBC1640年、BC4530年、BC1110年という調査結果が出たそうだ。

TL年代測定法

前述のハプグッド教授が、当時新開発されていたTL(熱ルミネッセンス)年代測定法で測定した結果、BC2500年と出た。その後18回も反復測定したが、同様の結果がでる。TL法は無機物に含まれる熱エネルギー量を測定してサンプルが加熱された年代を割り出す、より精度の高い方法である。

また、20年前から建っている地元警察署長の家の床下を掘り進めたところ、43個の恐竜土偶が出土した。これらのことから偽造行為は払拭できそうである。

真相

始原文化説

ハプグッド教授は「BC2500年以前、アカンバロには中南米最古の母体的『始原文化』が栄え、エジプト・メソポタミア、中国、インドなど同時期の古代文明とも接触があった」と仮説を立てたそうだ。

当時のアカンバロ近辺の気候は温暖多雨で、豊かな湖水と緑したたる大森林が広がっていたのだろうとする。

様々な種類の製品が大量に完成形で発掘されたのは、スペイン人の略奪から守る目的で地中に埋葬されたのだろうか。

アカンバロ恐竜土偶は、エジプト・シュメール・日本・モンゴルなど各国の特徴が揃っている。人物像にいたっては、インディオ・モンゴル・コーカサス・ポリネシア・ニグロなど人種的特徴を備えた作品まである。

しかし、土偶の中にはゴジラに似たような恐竜もいる。我々現代人が想像していた恐竜像と紀元前数千年前に作られた恐竜像が似通っているのは不自然だ。

また、文化の母体となったのなら、文化のインフラの記録や、石版や文字による記録が出てきてもよさそうだ。しかし、アカンバロ恐竜土偶以外には遺跡的な証拠は発見されていないのである。

恐竜でない説

そもそもが恐竜でなく、トカゲやコモドドラゴンのような爬虫類を模して作られたのではないか。もしくは、神話にでてくる神獣のようなものを想像して作られたとするほうがしっくりくる。

想像上の恐竜を元に作られたもの

人類は恐竜と共存していた時代はない。恐竜の絶命は、今から6500万年も昔だが、人類が地球上に出現したのは400万年前なので共存していたとは考えられない。

したがって、アカンバロ恐竜土偶は、仮に古代時代に製作されたとしても想像上の恐竜を元に作られたものであり、実物を参考に作ったものだとは考えがたい。

信憑性に欠ける測定方法

放射性炭素C14の年代測定法で測定したところ、紀元前1110年から紀元前4530年という数値が出たという。

しかし古い土壌で製作した場合も、制作年代よりも古い測定結果が出るので、信憑性に欠けるとの意見もある。

教育のため

一般的に土偶は祭祀などの際に破壊したり、災厄などを祓うことを目的に作成されると考えられている。しかしアカンバロ恐竜土偶は、意図的に壊されている形跡はなく、崇拝のためとも考えがたいデザインである。

様々な種類の土製品が出土したことから、百科事典のように色々な情報を子供たちに伝えるような、教育の一貫として作られたと考えるのはどうだろうか。

まとめ

アメリカのモンタナ州のニール・スティードは、アカンバロの解明に心血を注いできた。数千もの遺物の目録を作ったが、そのうち約30点について詳しい分析を行ったところ、古代の遺物と近代の模造品が混在していることが明らかになった。

いまだ、アカンバロ恐竜土偶以外には遺跡的な証拠は発見されていない。解明への道はまだまだ遠いようだ。この先アカンバロの土偶が古代に作られたものであるという証拠が土偶以外で発見されることを願うばかりである。

オーパーツが展示されていた場所

メキシコのヴァルデマール・ユルスルート博物館

参考文献
  • オーパーツの謎:南山宏
  • 神々の遺産オーパーツ大全:並木伸一郎
  • オーパーツ大全:クラウス・ドナ、ラインハルト・ハベック

RECOMMEND

TO TOP