東北地方のオーパーツ「遮光器土偶」はゴーグルをつけた宇宙人だったのか?

遮光器土偶

遮光器土偶は1887年、青森県の亀ヶ岡遺跡から掘り出された土偶である。横筋の入った大きな目、宇宙服のような衣服が特徴である。これに似たような土偶が東北地方を中心に次々と発見された。

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この変わった姿は当時話題となった。そしてエスキモーの先住民が使う遮光器が亀ヶ岡遺跡の土偶の目元に似ていることから、遮光器土偶」という名前が定着するようになった。

宇宙人説

掘り出されたときは、とっつきにくく理解しがたい不格好な粘土に過ぎなかったが、一部のSF作家や古代研究科が面白いことを言い出したのである。

それは「遮光器土偶が宇宙人を模したもの」という説だ。スイスの宇宙考古学者エーリッヒ・フォン・デニケンは、遮光器土偶が宇宙人の姿だと主張した。

いわれてみれば乳房の周りにあるダイヤル式の模様や広すぎる肩幅は衣服にしては不自然だ。

そして、大きすぎる二重の縁に囲まれた目と細いライン、小さすぎる口は人間離れしている。まるで宇宙空間での強い紫外線や熱線を遮るサングラスをかけているかのようだ。

実際にNASAがその説をもとに、遮光器土偶を分析した結果、頭はヘルメット、肩と腰は耐圧構造という具合に土偶の形状が宇宙服として合理的なものであるとした。つまり、この土偶のような姿の生物が宇宙船から降りてきても不自然ではないということである。

ちなみに、こちらがアポロ11号が着ていた船外宇宙服である。

また、当時、来日していたロシアの科学評論家アレクサンドル・カザンツェフは、雑誌「アガニョーク」に「これは地球を訪問した、宇宙服を着た異星人をモデルにしたものだ」と大胆な仮説を発表。頭部は通信機つきのヘルメットで、目は宇宙空間を飛ぶ放射線を防ぐグラス、体は宇宙服だという。(超古代文明とオーパーツの謎より)

やはり宇宙考古学者が言うように、遮光器土偶は宇宙人の姿なのだろうか?もしくは、宇宙服を着た未来からの訪問者なのだろうか?

定説

繁殖や豊穣を祈願

土偶の役割は、詳説日本史図録によると「土偶は、出現した当初から乳房や腰など、女性の身体的特徴を誇張して表現されたものが多い。また、妊娠した姿や子どもを抱いているものもある。このことから、縄文人は女性の持つ生殖力を神秘と感じ、その力が大地に与える植物やそこに生きる生物、すなわち食料の豊穣をもたらすことを土偶に願ったものと考えられている。しかし、顔を表現しない土偶も多くあり、土偶は性を超越した精霊の姿とする説もある。」と書いてある。

土偶は女性がモデルであり繁殖や豊穣を祈願したものという推測は有力な定説の一つである。土偶のシルエットと女性のシルエットが似ていることから考えても無理のない説である。

エスキモー人到来説

亀ヶ岡遺跡から出土した遮光器土偶は、エスキモーがつける遮光器のようなものをつけている。遮光器とは北方民族が雪焼けから目を保護するために用いるゴーグルのことである。

エスキモーがつける遮光器はこちら。土偶の目元とほぼ完全に一致している。

出典:エスキモー – Wikipedia

縄文時代に大陸からエスキモー人が東北地方に到来し、住み着いた。そのときのエスキモー人の特徴を模したとする説。

医療、厄除け

詳説日本史図録によると「大部分の土偶が壊された状態で出土し、はじめから壊されることを想定してつくられたとみられるものあることから、人びとが土偶を故意に傷つけることで、病気や災害を土偶に転嫁しようとしたという説もある。」としている。

縄文時代は、医療は発達していないから、祈願によって病気や怪我の治療を試みたことは当然あっただろう。シャーマンが土偶に病気を投影させ破壊することで、心身ともに健康状態へ導くのである。

呪術用

ひとつの遺跡から何十個も見つかっているので、呪術用に使われたとする説も有力である。

青森県の亀ヶ岡遺跡では、遮光器をつけた土面が出土している。土面は人間の顔の大きさに近い。儀式などで実際に顔にあてられて使われた。土面の目元は遮光器土偶のゴーグルに見える。

出典:小説日本史図録

フィギュア説

人物・キャラクターなどを形にした人形として扱ったというフィギュア説。現在、人間を模したフィギュアは明らかに女性が多い。これは収集癖のある男性が多いことと、フィギュアを買う層に男性が多いことが関係している。

縄文時代も現代と同じように、コレクター癖のある男性が、自分の趣味に浸るため、もしくはレアな土偶を所有しているという優越感を満たしたい気持ちなどから土偶をコレクションしていた可能性は大いにある。東北地方では、土偶フィギュアが流行っていたかもしれない。

真相

遮光器土偶が宇宙人であるという説は、SF作家やCBAという機関紙でいわれていたようだ。

土偶の乳房が何かのダイヤルではないかと、五島勉氏が宇宙人謎の遺産で書いていた。しかし、jaxaの船外活動ユニット(EMU)の構造を見てみると、温度調整バブルは一つになっている。体温や気圧の調整をするバブルが、ちょうど両乳房の位置に2つある必要はない。

宇宙服のようなデザインに関しては、宇宙服を見てわかるように、ウエストがくびれている必要はない。もし宇宙服のウエストがくびれていたら、着る人が限られてくるので使い勝手が悪い。

宇宙服は、ゴーグルのように2つのレンズではなく、ヘルメットが使われている。仮に土偶の目元が宇宙用のゴーグルだとしても、細いラインの説明がつかない。

土偶の首元についているアクセサリーやVネックのラインは宇宙とどう関係するのか?などなど、ツッコミどころ満載となった。

以上、定説と上記の考察から、遮光器土偶は宇宙人(宇宙服を着ているなにか)であるとは言い難い。ゴーグルに見える目元は北極圏地方の遮光器、用途は祭祀用とするのが自然である。

いずれにしても宇宙人や未来人の科学的証拠はなにもない。宇宙人説は、一部の神秘主義の方々による願望なのである。

オーパーツが展示されていた場所

日本:東京国立博物館、他

参考文献

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